2009年12月04日

うちの子は鼻水が出ると喘息発作が出るんです

“うちの子は鼻水が出ると喘息発作が出るんです!”

 医師になりたての頃(15年前)から外来でこのような訴えをよく耳にしていました。“そのようなお子さんもいるのかな?”と漠然と思っていました。しかしお母さんの言っていたこのセリフは医学的にも正しかったのです。今回はそれを説明したいと思います。キーワードは“One airway, one disease”です。尚、細かい点は省略してアバウトに説明します。それでも今回はちょっと難しいかもしれません。

One airway, one disease
 鼻も気管も一続きの空気の通り道であるのだから、鼻のアレルギーも気管のアレルギー(喘息)も区別せずに一つの病気として捉えようという考え方です。これを英語で “one airway, one disease”と言います。喘息でない人がアレルギー性鼻炎である確率が約20%であるのに対し、喘息患者さんでは70-80%がアレルギー性鼻炎を合併しているとされています。つまりアレルギー性鼻炎と喘息は密接に関連していて、全く別の病気という訳ではないのです。喘息患者さんで鼻の症状が悪化した場合には、喘息発作の前ぶれ、あるいは同時に起こっている可能性があるということなのです。

治療について
 One airway, one diseaseの考え方によると鼻アレルギーを合併している喘息患者さんでは喘息の治療だけでは不十分で鼻アレルギーの治療も併せて行うべきだということになります。喘息患者さんに鼻炎の治療を行わなかった場合の救急外来受診率および入院率は鼻アレルギーの治療によって低下したという論文があります。ステロイド点鼻薬と第二世代抗ヒスタミン剤(飲み薬)の2種類を使用すると、救急外来受診率は6割減り、入院率は8割減ったというのです。つまり喘息患者さんの鼻炎の症状が悪化した場合には適切な対処が必要と考えられるのです。


今回はイラストを載せませんでした.....
アドバイザーが見つかったので次回頑張ります。
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2009年11月23日

気管支喘息は慢性炎症(=持続的な火事)

 最近はマイコプラズマ感染症やインフルエンザ感染症とともに気管支喘息発作で受診するお子さんも増えていますので今回は気管支喘息をとりあげます。

 気管支喘息のお話をするにあたっては「喘息はどんな病気なのか?」、「どうやって診断するのか?」、「どうやって治療するのか?」、「家庭で行うセルフケア」などと順序だてて詳しくお話する必要がありますがブログの中ではとても説明しきれるものではありません。

 外来で「そんなに咳もしていないのに、どうしてお薬を長く続けなければいけないのですか?」、「一体いつまで続けなければいけないのですか?」という質問を多く頂きます。そこで今回は、その理由を中心にお話ししたいと思います。慢性炎症(=持続的な火事)がキーワードになります。

気管支喘息はどうして長く治療を行う必要があるのですか?
 気管支喘息というとゼーゼー・咳というイメージがあると思います。しかしそれは喘息“発作”の症状であって喘息の本態は“気管がずーっと炎症を起しているのだ”ということを理解することが重要です。炎症は体の中で起こる“火事”に例えられます。つまり喘息の患者さんの肺の中の気管を顕微鏡でのぞいてみて見ると、発作が起こっていなくても慢性炎症という持続的な火事が起こっているのです。図はクリックすると拡大されます。見づらくてすみません。

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 この火事をほったらかしにしていると、ちょっとした刺激で発作が起こりやすくなるだけでなく気管の壁はどんどん厚くなります。そして最終的には厚くなった壁が元に戻らなくなってしまいます。壁が厚くなってしまうと同じ程度の発作でも、それまで以上に苦しくなってしまいます。そうならないためにも慢性炎症という持続的な火事を消す必要があるのです。

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持続的な火事が続いている証
 喘息の患者さんは運動によって、あるいは冷たい空気を吸ったり、大笑いしたり、湯気を吸ったりなど....ちょっとした刺激に敏感に反応してゼーゼーしたり咳き込むことがあります。このことを気道の過敏性亢進といいますが、これは一見普通に見える状態でも気管が持続的に火事(炎症)が起こっているために生じるのです。

慢性炎症を鎮める薬
 持続的な火事=慢性炎症を鎮める薬の代表は吸入ステロイド(フルタイド・キュバール・パルミコート・アドエア等)と抗ロイコトリエン拮抗薬(キプレス・オノンなど)です。どの薬によって炎症を抑えるかは患者さんの重症度によって様々です。重症度は発作の頻度や行っている治療によって定期的に判断します。

ずーっと続ける必要があるの?
 普通の火事と違い喘息の火事はとても頑固なので、しばらくお薬を続けなければなりません。定期的に重症度を判断しながら薬を減らしたり、あるいは増やしたりする必要があります。安定した状態が数ヶ月から2年間確認出来れば治療の中止を検討します

子供の喘息は治るのですか?
 3歳までにゼーゼーした人では、60%が6歳の時点でゼーゼーしなくなったという統計があります。また6歳-7歳で喘息と診断されているお子さんでは50%-60%は大人になるまでにゼーゼーしなくなるという研究結果があります(いずれも日本ではなく海外での研究です)。


それにしても図が見づらくてどうもすみません。図はPC内にあったペイント(プログラム ⇒ アクセサリ ⇒ ペイントでたどり着く)で作成しているのですが、拡大しなくてもちゃんと見れるようなイラストはどのように作成するのでしょう?

誰か教えて下さい........


posted by ながやまキッズファミリークリニック at 16:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療コラム

2009年11月15日

マイコプラズマ肺炎

早いもので11月も半ばとなりました。

H22.10月の中旬頃からマイコプラズマ肺炎の患者さんを見かけるようになりました。

下のグラフは10月以降にマイコプラズマ肺炎の患者さんが旭川市内で増えてきている様子を示しているグラフです(クリックすると拡大されます)。

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そこで今回はマイコプラズマ肺炎についてお話したいと思います。


<マイコプラズマ肺炎について>
 発熱・咽頭痛(のどの痛み)・咳・頭痛・倦怠感(体のだるさ)とあたかも風邪のような症状で始まります。長引く熱や咳のため気付かれるケースが多くあります。好発年齢は5-10歳台で潜伏期間は平均2-3週間とされています。

 マイコプラズマ肺炎は肺炎マイコプラズマ(以下、マイコプラズマ)というバイキンによる感染症です。このバイキンの大きな特徴は普通のバイキンは殻(カラ)を持っているのに対し、マイコプラズマは殻(カラ)を持っていないことです。

<殻(カラ)がない......>
 広く用いられている通常の抗生剤は殻(カラ)を壊すことでバイキンをやっつけますが、その抗生剤では殻を持たないマイコプラズマをやっつけられません。通常の抗生剤で治療しているにもかかわらず症状がなかなか改善しないのはそのためです。

 マイコプラズマはバイキンが分裂出来ないようにする力を持った抗生剤で攻撃しなければなりません。バイキンが分裂出来ないとやがて寿命が尽きて死んでしまうことを利用した治療方法です。寿命が尽きるまで時間がかかるので適切な抗生剤を用いても熱が下がるまで3日前後を要します。咳はマイコプラズマが体の中からいなくなっても2-4週間続きます。

・普通のバイキン:殻(カラ)がある
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殻を壊す抗生剤(通常の抗生剤)が効く

・マイコプラズマ:殻(カラ)がない
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・殻を壊す抗生剤(通常の抗生剤)が効かない

       ↓

 分裂を抑える抗生剤を用いる


<診断方法> 正確な診断には2回の血液検査が必要です!

1. 肺炎と気付いた時(1回目)、2. 気付いた時から7-14日後(2回目)で血液検査を行います。血液中のマイコプラズマに対する免疫(抗体というマイコプラズマをやっつける体の中のミサイル)を確認します。

1回目の検査で免疫反応が低い状態であることを確認し、2回目の検査で免疫反応が高まっていることが確認でれば診断が確定します。

実際に、最近、マイコプラズマ肺炎と診断した患者さんの血液検査を示します。尚、マイコプラズマの感染を起こしたことのない人の検査値は40倍未満です。

○○ちゃん
1回目の検査でマイコプラズマに対する抗体(=ミサイル):80倍
              ↓
2回目の検査でマイコプラズマに対する抗体(=ミサイル):320倍

○○くん
1回目の検査でマイコプラズマに対する抗体(=ミサイル):160倍
              ↓
2回目の検査でマイコプラズマに対する抗体(=ミサイル):2560倍


<迅速診断について>
上記の方法が時間がかかるということで、すぐに、しかも一回で結果が出るという方法が登場しました(採血が必要ですが......)。

子供への注射も一回で済むので大変魅力的なのですが、残念ながらこの方法では一回の検査で陽性と出る確率は30%と低いだけでなく、その検査で陽性と判定されても本当はマイコプラズマではない確率がおよそ20%と信頼性に問題があります。結果の解釈には注意が必要です。

時々“1年間に何回もマイコプラズマに罹ったことがあります”...と言われる患者さんがいますが、おそらく迅速診断の結果の解釈の誤りだと思われます。


参考文献)
尾崎隆男、西村直子. マイコプラズマ・ニューモニエ肺炎の診断と治療に関する最近の治験. 感染と抗菌薬 vol.11, no.1, 2008.


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2009年10月30日

風邪の診断

開院から1ヶ月が経過しました

勤務医とは異なる大変さでした....が
素敵なスタッフに恵まれて何とか乗り切ることが出来ましたわーい(嬉しい顔)

インフルエンザが下火の様相になってきたのは何よりです



若干の余裕が出てきましたので病気のお話をしてゆきたいと思います



風邪の診断

「風邪」という診断をよく耳にすると思いますが、実はあいまいな診断です。教科書を見ると「主にウイルスによって熱、咳、鼻汁(鼻みず)、咽頭痛(のどの痛み)が生じる病態」と定義されています。

 抗生剤による治療は無効であり、症状を抑える治療で経過を見ることになります。あたかも診療が簡単に思われがちですが、実際はそう簡単ではありません。「風邪」と診断する検査やキットがないのですから.....

 熱が出て喉が痛くなる病気にはインフルエンザがあったり、アデノウイルスがあったり、溶連菌などがあります。咳が喘息の症状であったり、鼻水がアレルギー性鼻炎だったり、よく経験する症状ひとつとっても様々な病気が考えられます。これらの病気を否定して、はじめて「風邪」の診断に至るのです。これはあたかもジグソーパズルで周囲を埋めていったときに、その隙間のピースがどのようなものであるか浮かび上がってくる様に似ています。

 初期段階での「風邪」の診断は難しいことがあります。それは症状が出現して間もなくの段階では喉が赤くなかったり、インフルエンザの検査で陽性と判定されなかったり、レントゲンに影が写らないなど他の病気との区別が困難のことが多いためです。ただの鼻かぜと思っていたら咳がついてきて、ゼーゼーもひどくなって、実はRSウイルス感染症による肺炎+喘息様気管支炎だった…なんてことが、めずらしいことではありません。「後医(後で診察をするお医者さん)は名医」という言葉があります。診断には経過を確認することが必要となることもあるのだということを皆さんに知って欲しいと思います。

 ...といって診断をおろそかに「熱が出たから、原因は判らないけど念のために抗生剤」と考えていると、真の病名を見逃してしまう可能性も出てきます。例えば腎盂腎炎(腎臓でバイ菌が増える)は抗生剤を使うと良くなります。しかし熱が出たから抗生剤…と診断をつけずに抗生剤を使用すると、最終的に熱の原因は判らないままということになります。結果として治療が不十分で再発しまうことも考えられます。

 また「念のための抗生剤」ということで不必要な抗生剤をどんどん使っていると体の中に耐性菌という抗生剤の効かない菌が発生し、本当に必要な時に抗生剤が効かないという事態が発生するおそれが出てきます。この耐性菌はお友達に伝播していきます。未来の子供達を守るためにも抗生剤は大事に使いたいと考えています。

*参考文献:思考としての感染症、思想としての感染症 岩田健太郎(中外医学社)



posted by ながやまキッズファミリークリニック at 12:38| Comment(1) | TrackBack(0) | 医療コラム

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